思い出は遠く ~ラーメン、その原点
テーブルに置かれた中華そばを目の前にして、おチュウは頭の整理がつかないのでした。
長年のイメージとはかけ離れている。
違う! それは言える。
これはいわゆる和歌山ラーメンではないのか。
食べてみた。いや、ちょっと違うかも? しかし、似てはいる。
が、そんなことどうでもよろしい。
すでに代がわりをして、あの頃の中華そばは消え失せていました。
近年のご当地ラーメンブームに乗じ、完全にそっちの方に舵を切っていたのです。
おチュウはたまらない寂しさを感じました。
こんなことなら、来るんじゃなかった。思い出としてしまっておけばよかった。そして、故郷に帰りさえすれば、いつでも食べることができる。そう思っておけばよかったのです。
ものの10分もたたないうちに店を後にしました。
四十年の歳月は何もかも変えてしまったようです。街並みや、ラーメンさえも
でもせっかくだから、小さい頃よく遊んだ場所を少し歩いてみるか。
風は冷たいけれど—-。 一つ列車を遅らせれば、まだ十分時間はある。
その時、ポツリポツリ 傘持ってなかったなあ
散策は次にしよう。
もう来ることなどないことは、心の中で分かっていたけれど —–。