イチゴショートケーキ至上主義

ケーキセットなら、

ブレンドとイチゴショートください。

おチュウは大体そう答えます。

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とにかくケーキは生クリームの上に苺が載っていればいいんです。

それだけで心が満たされます。

確かうんと小さい頃こんなものありませんでした。

それがある時期、突然現れて ——-

世界が変わりました。

おチュウには出現した社会的・食品的・技術的背景はわかりません。

とにかく子供だったある時期に、

このような気品のあるケーキが出現したのです。

ほとんど時を同じくして、

スポンジも、

ごわごわで水分の不足したすぐにのどに詰まりそうな素材から、

柔らかくみずみずしいものに変わっていました。

甘さ抑え目の生クリームに苺の酸っぱさがマッチして、

口当たりの良い湿り気のあるスポンジとの組み合わせが、

たまらなくおいしかったのです。

それを食するのは我が家ではめったになく、

誕生日やクリスマスなどの特別な日のみでした。

つまり、このケーキはそう簡単には食べることのできないものだったのです。

だから、これを前にすると今でも緊張します。

多分あの頃に対するノスタルジアや感動の記憶から、

他のもっと見た目艶やかなケーキたちには目もくれず、

今日もおチュウはイチゴショートを注文し続けるんだと思います。


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