議員になった同級生とドッジボールの記憶
ドッジボールは今でも子供たちに人気があるのであろうか?
小学校の頃、朝早く登校し始業間際まで運動場でドッジボールをして遊んだ。
それは放課後にも及び、一度帰宅してから再び集まりそこここで空き地があるとドッジボールをしたものだ。
ルールはシンプルで、相手めがけて思いっきりボールを投げ、相手が取れなければ負け。
だから、二人以上何人いても遊びは成立する。
負けた人間は勝った子が負ければ復活できるが、それまでは参加できない。
誰しも強いボールを投げたいと思い壁に向かって練習したから、肩の鍛錬にもなったと思う。
ところで、当時実家の隣は一段下がって田んぼだった。
ある日、その田んぼで同級生と二人っきり、暗くなるまでドッジボールを投げ合ったことがあった。
冬場の時期だったのであろう。
なぜそのことを覚えているのかというと、その日家に帰ってからひどく発熱し寝込んでしまったからだ。
インフルエンザだったのかもしれない。
その子は、日ごろよく遊ぶ近所の友だち連中ではなかった。
家がずいぶん離れていたせいもあるのかもしれない。
しかし、なぜその日に限ってその子と二人だけで遊んだのか思い出せない。
彼は無口でクラスでも目立つ存在ではなかったが、つかみ合いのけんかをしている姿を目撃したこともあるから、芯は強かったのかもしれない。
ただ、中学生で同じクラスになることもなく、高校は別になったから、その後私の人生と関わりを持つこともなくなってしまった。
数十年後、風の便りに故郷の市会議員になっているという話を聞いた。
あの頃の印象とずいぶんかけ離れており、私にはイメージが繋がらない。
そのため、ネット検索し真偽を確かめてみたことがあった。
すると、写真が出ていて、白髪交じりの顔は少しふっくらして歳を取ったとはいえ、紛れもなくその子がそこにいた。
私は、あれから後の彼の人生に思いを馳せてみたが、如何せん子供のころで関わりが無くなっているわけで、いかなる思想信条を持ち議員となり故郷のために働いているのか分かるはずもない。
ただ、薄暗くなった冬の田んぼで、一心にドッジボールを投げ合っている二人の姿が思い浮かぶのみである。