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なれ寿司とは
和歌山県北部から中部にかけて昔から伝わる料理で、酢飯に鯖を載せ笹の葉(あせの葉、バレンなど)で全体を幾重にもまいた後、樽に何層にも敷き詰め上から重しを載せて発酵させた発酵寿司です。
秋が深まり鯖に脂がのったころ作ったなれ寿司は絶品です。
また、発酵期間数日のものを早なれ、ある程度日数が経ち発酵が進んできたものを中なれ、更に発酵が進みどろどろになったものを本なれと呼ばれています。
おチュウは和歌山で生まれ育ちましたが、小さい頃は各家庭になれ寿司専用の桶がありました。
秋になると山に出かけ笹を取ってくる。その笹を使い、母親は脂がのった鯖と酢飯で寿司を作り笹で巻き、樽に仕込むのです。
なれ寿司の作り方は各家庭で大筋では同じですが、酢飯や鯖の調整具合、笹の巻き方や寿司の大きさ、さらに漬け込む際の重しの重量、発酵・保存条件などで微妙に味が変わってきます。
したがって、各家庭で作ったなれ寿司は多かれ少なかれ味が異なり、それが家庭の味となるのです。
つまり、幼い頃の記憶と相まって個々のアイデンティティにも関わってくるのです。
精神的なよりどころともなるわけで、頭の片隅に深くしまい込むことになります。
たとえば、毎年母が作ったなれ寿司は一口食べればわかりましたが、母の実家に遊びに行った際にご馳走になったなれ寿司は、食べた瞬間味が異なることがわかりました。
筆者が口にしていたのは早なれです。
中なれや本なれは発酵期間が長く、その分癖も強くなるため、我が家では避けていました。
酒を好む人は、本なれが良いつまみになると聞いたこともあります。
早なれに関しては、比較的最近まで和歌山のスーパーでも販売していたが、それも近年急速に見なくなりました。
高齢化が進みなれ寿司を食した世代が減少したのか、それとも食文化の多様性が進み地味なこういった発酵食品を食べる機会が少なくなったのか、実際の所わかりません。
しかし、なれ寿司は紛れもなく和歌山地方に伝承されてきた発酵食品であり、食文化的側面から見た価値とこの地に暮らした先祖が当地の風土に合った発明品であることに間違いはありません。
なので、可能な限りなれ寿司に残っていてもらいたいし、個人的にもいつまでもなれ寿司を食べていたいと思うわけです。
なれ寿司(早なれ)もとめて
以前は和歌山に帰省した折り、スーパーに行けば売っていました。
それを大阪に持ち帰り、ちびちび食べていたのです(2017.11.10ブログ)が、最近見なくなってしまったのです。
いろいろ探ってみると、お豆さん、山本といった製造業者が店を閉じてしまったという情報を得ました。
廃業したのだから、いつまで待ってもなれ寿司は手に入らないわけです。
実際、海南駅前にあったお豆さんの店を訪ねましたが、店じまいをしておりました。
ショック! ここのなれ寿司が母親が作った早なれに比較的近かったのですが‥‥
ネットで検索する限り、1,2件製造販売しているようですだが、現地に行くしかなさそうです。
そこで、一応ダメもとで楽天市場を検索してみた。すると意外にもヒット!
ふみ子農園の商品として販売されております。
値段的には送料入れてまあまあの値段。
外れると痛手が大きいが、とにかく食べてみないことには始まらない。
食欲の方が勝り、一つ注文(2019.12.18ブログ)。
届いたなれ寿司は少々でかい、それと少し発酵が進んでおる。
早なれの時期は過ぎつつあるのかもしれない。
もっとも早なれと中なれの境界線があるわけでもないですが‥‥
これを一人で一度に食べきるのはきつい、2食分か‥‥鯖はでかく身に厚みがあり申し分ない。
飯も良く詰まっていた。
かなり重しが利いているのだろう。
発酵が進んでいるので、特有の香りが立ち始めている。
この香りと味がリンクして美味しいと思う人にはたまらないはずだ。
逆になじめない人は以後なれ寿司から遠ざかるに違いない。
位置づけとしては早なれの後期か?
以前ブログで紹介したスーパーで販売していた早なれとは味に距離があり、酸味と発酵の香りが強まっている。
筆者が目指しているのは、かつて家で食べたなれ寿司である。
ちなみに、このサイトでは中なれ、本なれも販売しているようだが、注文する気はない。
怖いもの見たさの人は一度トライするのも良いかもしれない。
早なれに関しては、気が向けばまた注文するかもしれない。
ということで、なれ寿司入手の手段は確保したが、別の入手経路はないものか‥‥。
その後月日が流れずいぶん経っところ、和歌山の物産販売サイト和味があるのを見つけつらつら眺めていた。
すると、商品になれ寿司もあることを発見。
早なれとある。
当然注文することに‥‥(2020.09.30ブログ)、でもさし当たり1本だけ注文し様子見する。
でもねえ、1本だと送料がなれ寿司とほぼ同じ金額ってどういうこと?
まあ、ここはぐっとこらえることにした。
数日後送られてきました。直ちに食す!
ふみ子農園より早なれというのが印象で、前回より食べやすい、鯖の風味が前面に残っていて美味しいが、これも重しが効き過ぎているのか飯がカッチカチで3切れ程度食べるとずっしり胃にきますねえ。
まあ1本で1食分ぐらいか。家の味にやや近づく。
ところで、ふみ子農園も和味も掲載されている写真がよく似ている。
製造場所の住所も同じか? ということで、製造場所は同じかもしれない。
もしそうであれば、各サイトの早なれが微妙に違ったのは、仕込んだ条件や発酵日数が微妙に異なるだけなのかもしれません。
最近の情報として、今年和歌山市駅が新しく改装し、駅ビルも完成したが、ビル内に物産コーナーもオープンしたらしいのです。
先日、息子家族が和歌山からの帰り、この物産コーナーでなれ寿司を発見!
土産にもらいました。
ただ、これも製造元は同じであると思われます。大きさは少し小ぶりで、これも早なれで食べやすかった。
和歌山ラーメンと笹寿司
和歌山ラーメンを食べに行くと、テーブルの端にざるに入れて笹寿司が盛ってあります。
ラーメンを注文し、笹寿司を食べながら腹を満たす。
この笹寿司が絶妙の取り合わせなのです。
笹寿司とは、一口か二口サイズのなれ寿司様の寿司で、笹の絵が描かれているフィルムにくるんで輪ゴムで留めただけのものです。
思うに以前は笹にくるんでいたが、近年笹が少なくなったため今の形になったのかもしれない。
なれ寿司に比べ小さく厚みが少ない。
発酵はしていなく、仕込む前のなれ寿司との表現が近いのかもしれない。
非常に食べやすい。
ラーメンは人によっては一人前で腹を満たすに少し物足りないかもしれない。
そんな時に笹寿司を食べることによって満腹感を得るのである。
鯖は寿司のサイズが小さいため薄っぺらい切り身ですがこれがまたほのかな酢飯と良く合う。
2,3個あっという間に食べてしまいます。決しておにぎりでは代用できません。
笹寿司を食べながらラーメンの汁をすする、これが至福の時です。
ところで、これも楽天市場でネット販売されていました。
5個単位で販売されているようだ。
ラーメンに関して、和歌山ラーメンは今やカップ麺として手に入りますが、別に無くても醤油もしくは味噌ベースのインスタントラーメンで遜色ありません。
思うに、なれ寿司の入門編として笹寿司なのかもしれません。
その他の鯖寿司
柿の葉寿司
笹寿司に近いものに柿の葉寿司がある。
これは、奈良の名物で食べた人も多いかもしれません。
酢飯に乗っている魚が鯖の他数種類あり、柿の葉で捲かれています。
ご存じのように柿の葉はさほど大きくはなく楕円形に近い形状である。
したがって、一枚の葉で包む量に限界があり、必然的に一口サイズであり、穏やかな風味で非常に食べやすいと思います。
奈良県は全国第2位の柿の産地であり、吉野の柿は有名ですが、その辺に柿の葉寿司のルーツがあるのかもしれません。
ちなみに柿の生産高第一位は和歌山県ですが、なぜ海のない奈良県で鯖を使った柿の葉寿司があるにもかかわらず、和歌山で見られないのだろうか。
和歌山では鯖が豊富に捕れたため、片身まるごと使用した大ぶりななれ寿司ができたのであろうか?
すると、柿の葉よりは笹の方が捲きやすくはなるが‥‥、その辺はわからない。
いずれにせよ笹寿司に近いため、おそらく柿の葉寿司もラーメンの友になるのは間違いないでしょう。
その他、鯖を使った押し寿司
近年鯖ブームで鯖料理が人気のようです。
青魚が健康にいいとの情報が浸透してきたせいもあるのかもしれませんが、鯖専門店が散見されるようになってきました。
青魚は死んだ直後からヒスタミンの有利が始まるため、古くなるとアレルギーが出やすくなる。
それ故、鯖などの寿司文化が広まったのだと思いますが、交通機関の発達により新鮮な鯖が手に入るようになり、鯖料理がブームになっているのかもしれません。
さらに、道の駅などでも焼き鯖の押し寿司を見かけるようになりました。
バッテラも庶民の間で以前から人気がありましたが、いずれも発酵過程を経ること無く食卓に上っています。