笛吹けど……踊らず

春ののどかな日でした。

風に乗り笛の音がどこからともなく聞こえてきました。

見渡すとセンダンの木の下で笛を吹く一人の女性が……

周囲には昼休みのため人々がいて、思い思いにくつろいでいました。

しかし、笛の音とは裏腹に動く気配はなく、耳を傾ける人もいないようです。

 

おチュウはその笛の音を聞きながら歩いていたのですが、

ふと遠くを見てしまいました。

およそこの世の中、まどろっこしいことが多いようです。

こうしたいとか、こうすれば良いと理屈では分かっていても、

なかなか動き出すのに時間がかかるのです。

まだかまだかと気を揉んでいるうちにタイミングを逸してしまう。

なお悪いことに、遅れて着手しても時すでに遅く、

ようやく軌道に乗った頃には問題は解決してしまっている。

だから、もうやめれば良いものを、一度動き出してしまうと止めることもできない。

つまり、機を見て今がその時と素早く手を打つ難しさと、

やめるときの決断の大切さ……

でも、着手すべき時にはまだ辺りにその気配すらなくてね

そんなことを思いながら、笛の音と動かない周囲の人々を重ねてしまったのですが……

ちょっとした白昼夢だったのかもしれません。